40数年の歴史の中で開発した、思い入れのある教材を紹介します。

メカトロニクスシーケンスキット

弊社が操業して間もないころに開発した教材です。現在でも国内のみならず海外でも販売を続けているロングセラーですが、こんなに長く売れ続ける教材になるとは思っていませんでした。

しかし、改良したい点はあります。一つは電流・電圧・電力について概念がしっくり自分でつかめるような仕組みを追加したいと思っています。私は中学校の理科でオームの法則を習いましたが、まったく理解できませんでした。オームの法則は電圧と電流・抵抗の比例関係を表したものですが、電圧と電流、電力などの概念を掴んでない人に教えるのは電気嫌いをつくる一因ではないかと思っています。そこをしっかりつかんで使用する電気部品の定格などの意味を掴めるような教材に改良したいと思っています。

機械製図入門

創業当初、X線CTスキャナーのサービスマニュアルの受注をいただき、海外の技術者向けに20数本のビデオを一年かけて作り上げました。この時に東芝那須工場で昼食を食べているとき、隣にいた望月部長から、「機械製図の教育ビデオをつくってくれないかな!」といわれたのが始まりでした。「立派な大学を出ててきた優秀な連中だとは思うが、機械製図はほとんどわかっていない。教育に苦労している。ということでした。呉高専時代の製図というのは機械設計便覧を自学しながら教科書の図面の書き写しのような作業を思い出しました。当時3DCGが利用できるようになり、旋盤やフライス加工などもあるので、今までにないものを作ろうと数年がかりで6本のビデオを作りました。日経BP社の日経メカニカル編集部に営業に行き日経BP社で販売していただくことになりました。明治大学の先生などから「大変良いものを作ってくれた、黒板に書いた汚い絵でやっていたが、私も、学生も大喜びです」という礼状もいただいた。

しかし、改良したい点も多々あります。一つは、3DCADへの展開です。安価なパソコンで素晴らしい3次元を使える環境ができているのです。「実体模型セット」という弊社の別教材も2次元の図面から3次元の形状を思い浮かべる訓練が必要だと思い、中国の奥地を訪ね歩き、家具などを作っている工場で作ってもらったのが始まりです。木材の輸入は害虫を入れることになるので燻蒸という木材処理を加え輸入にこぎつけました。今は3Dプリンタで品質の良いものが自社で作れるようになりました。この実体模型を3DCADで作り始める演習から開始したいと思っています。さらに木佐交差などの企画がより複雑化してきているので、このあたりの必要性や実際の使い分けなどについても解説したいと思っています。さらにいうならば、製図ではなく、設計に主眼を置いた教材の必要性も感じています。

キットで遊ぼう電子回路シリーズ

キットで遊ぼう電子回路は当時オーム社で月刊誌「新元気」の編集長だった杉山さんに声をかけていただき月に4,5回程度の原稿を2年か3年にわたって連載したものをまとめたものが始まりです。この「新電気」という雑誌は大正時代、まだ、一般家庭に電気が来ていないような状況のころに起源をもつ専門誌として日本の電気技術の発展に相当貢献してくれた雑誌である。主に強電の技術者が対象であるので、この人たちにエレクトロニクスの基本を紹介したいというのが椙山編集長の趣旨であった。毎月、締め切りに追われながら、東芝時代に先輩である渡瀬さんにチェックしていただきながら回を進めていった。私の持論であるが、教科書だけでは本当の勉強にならない。現物がで実際に回路を組んでみて確認することが必要である。そこで目をつけたのが中国製の部品をキットにして本と一緒に組み込んだ製品にすることだった。アナログの基本で2冊、ディジタルの基本で2冊を中核としてオペアンプやPICマイコン、テスターなどのセットを追加してシリーズ化を図った。

アニメ中学理科

 ビデオソフトのコンテンツの開発も始めたばかりではあったが、マルチメディアという言葉が時代を駆け巡るキーワードとして脚光を浴びる時代がめぐってきた。視聴するだけの一方通行のビデオから、画面上のボタン操作で、チャプターを飛ばし、利用者のペースに合わせて学習できる環境が整備できそうだ。このような考えでCD-ROM開発を企画した。ちょうど下の娘が中学校2年生だったこともあり、「アニメ中学理科」の開発を始めた。スタッフが優秀で、自分の期待する以上のものができる予感があった。中学校の1分野・2分野、それが各学年だから6巻の作品になった。娘が中学校の在学中にできるかなと期待していたが、完成したのは彼女が大学に入ったころだった。他の部門での利益をつぎ込んでも良いものを完成させたかった。この姉妹策でアニメ歴史シアターも良い作品だと思っている。歴史が暗記の科目になっていることに対し、歴史は面白い、社会で起きる物事に必ず因果関係があり、それを子供たちにある程度理解してもらいたかった。小学理科の塔というのも作った。それぞれのスタッフの創意工夫で作ったので、作風はばらばらだが、儲けるためというよりは、自分が面白い、必要だと思うものを開発できたのは、幸運だったと思う。巨額の開発費がかかったが、ある大手の学習塾の方から、OEMの声がかかり、多分、すべて回収できた。

 この作品をそのように展開するか? 現在構想中である。この作品を踏襲したものをオンラインでつくりたいとも思うが、理科好き少年少女を増やすようなコンテンツにしたいと考えている

アニメ材料力学

 マルチメディアの作品でもっと面白いものはないかと模索していた時、材料力学がひらめいた。呉高専の2年生の時、材料力学でならった中立面のコンセプトを反芻しながら阿賀駅前のバス停の砂埃を思い起こしていた。ネットで調べると横浜国大で院生が、材料力学をマルチメディアで作ったという記事が引っかかった。早速、横浜国大の担当の先生に連絡して話を聴いた。川村教授と角教授が対応下さった。実際にはすでに卒業した、学生さんが作ったものだという。

 私としては、内容そのものよりも、横浜国大というブランドが欲しいかった。作品としては、一応ひな形的なもので参考にするが、自社で開発をしますといったような覚えがある。 売り方についても何か良い方法がないかと考えた。そしたら日経BP社に宣伝していただく案を考えた。日経メカニカルという雑誌jに全頁広告を弊社として出すと百万近いお金がかかる。うれるかどかわからないのにそんな広告費は出す勇気がない。しかし、日経BP社様の方で1ページ分追加するのはそれほど予算のかかることでは無いはずだ。そう考えて、定価の8掛けで卸すので、日経BP社で販売してくれませんかと提案した。編集長は腕組みをしていたが、杉原さんという発行人がやってみようとゴーサインを出してくださった。

結果は大成功だった。角先生と川村先生が当時の機械学会の会長さんから推薦文を貰って下さり、それをパッケージに入れたのも効果が大きかったと思われる。これを機に、日経BP社とのコラボが20数年続くことになる。

その当時の主だった責任者の人たちは相当退職されてしまったが、人とのつながりでビジネスチャンスをいただいて幸運だったと思う。

冷間鍛造入門

 プレス装置で国内の有力メーカーの一つにアイダエンジニアリング(東証1部)という会社がある。冷間鍛造技術では国内トップの実績をあげている。ここが海外の提携機関などから海外研修生を対象に有料の技術講座を開催していた。ここの研修講座を受託して制作させていただいたのが、発端である。呉高専時代の同期生の中野君から話をいただいた。成型技術センターの役員として活発に冷間鍛造技術の普及に努力していた。時代が流れ、この技術を公開し、国内全体の冷間鍛造技術をさらに強化しようという機運があり、日経BP社の企画、制作アドウィン監修成型技術センターとして一般に販売することになった。いまでは冷間鍛造という言葉は一般的になったが、このDVDの果たした役割は大きいと考える。

 ここにこぎつけるには社内調整も大変だったと思われる。各種の条件を提示いあただき、何とか、販売にこぎつけた。現在オンライン講座が普及してきたが、学習者の成績管理などを含め、各種の技術講座のオンライン化を進めたいと思う。